若いチカラが原動力!道産ブルーベリーの挑戦


マネージャー 植村真理さん
「僕らがここにいる理由」から。
150年近く前から果樹栽培が行われ「道内屈指のフルーツ産地」として知られる余市町。2015年、この地で新たに日本最大級のブルーベリー栽培が始まりました。手掛けているのは、世界18カ国に60拠点を有する化学系の専門商社・稲畑産業と、カナダで最大規模を誇るブルーベリー栽培会社・Silver Valley Farmsの合弁企業である“アイケイファーム余市株式会社”です。 農場設立10周年の節目となった昨夏、収穫直前の畑に伺うとマネージャーを務める植村真里さん&スタッフの皆さんが迎えてくれました。現場を支えるスタッフは20〜30代と若く、出身も経歴も四者四様。皆さんのバックボーンが、気になります! まずはリーダーの藤舘さん。畜産を学ぶために千葉から北海道の大学へ進学。「就職活動も畜産系で探していましたが、合同説明会で当時の社長の『新しいこと、やったことのないことにチャレンジしている』という言葉にひかれ、入社しました」。 藤舘さんと同期入社の細谷さんは食品業界を志望していたそうですが「大学で学びを深めるうちに農業の楽しさを知り、気持ちが変わりました。酪農関係のお話も聞いたりしましたが、専攻していたこともあって果樹が一番おもしろそうだなと」。 入社は二人の1年後輩ですが、経験に長けているのが森元さんです。「前職も余市でブルーベリー栽培をしており、職場を離れる際、アイケイファームの私の前任の方に声を掛けていただいたのがきっかけです」。 実はこの農場、成り立ちからしてチャレンジング!栽培が決まった当初、出資元である稲畑産業の職員が東京から余市へ出向き、畑を耕すところからスタート。全員、商社にお勤めの方で農業未経験での開墾でした。加えて、ブルーベリーの木は収穫できるのが定植3年目以降。初めの2年は果実がとれず、近郊の農園へ手伝いに行くなどして、自社のブルーベリーが実るのを待ちました。 そして、堀井さんは昨年入社の新人。中でも異例の経歴で「工業系の大学に進み、物理を研究するために大学院にも行きましたが、全く未練はありませんね」。なぜ、農業に?「学生時代、他のアルバイトは1年と続かなかったんですが、農業のバイトは4年も続けられたので、向いているかなと思って」。辿り着いた理由はそれぞれ。ですが、皆さん、とってもいい顔をしています。
「20→40→65→75…」って!

この数字は、アイケイファームの年間収量の推移。2022年が20トン、翌23年は倍の40トン、24年には3倍以上となる65トン。昨年はなんと5トン増の75トンと急伸!国内の一般的な農園は、多くても10トン前後。1カ所でこれだけの収量を担う農場は全国でも少なく、それをほぼ手作業で実現しているのは皆さんの努力以外の何物でもありません。挑戦の地に余市を選んだ背景は?全体を統括する植村さんに聞きました。 「稲畑産業には食品部門もあり、ブルーベリーを含む冷凍果実や魚の輸入を行ってきました。次第にお客様から『生の国産品を食べたい』とのお声をいただくようになり、会社としても『輸入販売だけじゃなく生産に挑戦してみたい』と、栽培ノウハウを持っていた輸入元のSilver Valley Farmsに相談し、農地探しを始めたんです。決め手はカナダと緯度や気温が近いこと。そして一番は土です。ブルーベリーが好むpH4.3〜5.3の酸性のほ場だったことが、大きいですね」。 一方、カナダと違うのが積雪量。雪の重みで木が折れてしまうので、毎年の冬囲い作業が欠かせません。「1本1本、ひもで縛るのですが何せ3万5000本ですから。全員でやっても1カ月かかります」と藤舘さん。冬囲いをした後はつまり…「ええ、翌年の春、剪定前に全部外さなくてはなりません」と苦笑い。 悪いことばかりではなく、メリットも。雪に覆われることで気温が低くても蕾が守られ、凍害を防げるそうですが、近年の温暖化で雪が減っており、上側の蕾には凍害が増えているとか。ひとつ解決したと思えば、また次の課題。心配は尽きません。
持続可能の鍵は「チームワーク」。
7月から8月にかけては、農場が最も忙しくなるシーズン。アルバイトの方をはじめ40人体制で、朝6時から休憩・交代を挟み、毎日18時過ぎまで手作業の収穫が続きます。 アイケイファームのブルーベリーが、生で市場に出回るのは収穫期間の1カ月ちょっと。旬が短いだけに「替えがきかない食材なので、供給責任は重大です」と植村さん。収量を増やしているのは、安定供給をかなえるためですが、舞台裏にはどの現場でも抱える人手不足の問題が。 「初めてのアルバイトさんもいるので、できるだけ早く平均以上の技術まで上げるのが僕の役目。適期の果実を取りこぼさないよう、効率の良さも求められます」と藤舘さん。 指示を出したり、教えたりするのがちょっと苦手…と話す細谷さんも「藤舘くんといういいお手本がいるので、人を育てるスキルを学んで身に付けたい」と前向きに捉えます。 実なりが少ないと商売にならず、なり過ぎると木に負担がかかる上、人手の問題で「商品になるのに放置せざるを得ない実」が出てしまうリスクも。その実なりを左右するポイントは、剪定にあり!森元さんによると「大きく増減がブレないよう、剪定の段階で木の成長をコントロールするよう工夫しています」とのことですが、今後の物価高を考えると、収量が増えれば買う側にとっても価格の維持などプラスに働くはずです。農場ではこうした課題をふまえ、昨年から試験的に一部機械を導入。人手不足の解消と、収穫力の拡大へ向けた検証も始めています。 また、年に一度しかない収穫期にロスが出ないよう連携を強化。植村さんが立てた販売計画に対し、現場の藤舘さんが一緒になって「何をどれだけ収穫し、いつどこにどのくらい出荷するか」を打ち合わせます。 「それまでは責任者が決めた通りに収穫していたのですが、計画を共有することで『今なぜこの品種をとるのか』を、自分たちでも考えながら進められるようになりました」。植村さんも「実が傷むので雨の日はとれないなど、収穫期間中にもすごく波があるんです。お取引先のオーダーに沿って、状態の良いブルーベリーを随時出していかなければならないのですが、それはほ場をいつも回っている彼らが一番知っているので一緒にやっていけたら」とチームワークの重要性を感じているよう。 心に残ったのは皆さんの「常に限界を超えていこう」という熱意。その中で「毎日覚えることがたくさんあって、新しい経験ができて楽しい」と笑顔を見せる堀井さんに思わずほっこり…。生のブルーベリーと農業の未来を支える若き作り手たちのまっすぐなエネルギーに、元気をいただきました!応援しています!







